Vol.024 武藤ヒロシ

煙突の話
私の生家は昔銭湯をしていた。祖父の本業で無く、ただ風呂好きが高じたらしい。その為家に内風呂が無かったが、その事は何れ機会があれば書こう。
銭湯は私の生家から150m程離れていた。親戚の伯父が銭湯をまかされ、ボイラー釜の燃料の木廃材を伯父が原付リヤカーで運ぶ。木廃材は町の神社近くの製材所から出る木端や大鋸屑等。私や友達はそれに行き会うと、走ってるリヤカーに飛び付き、乗り上がり・・・挙句、伯父に叱られ、追い払われる。長閑かなものだった。
リヤカーにはいつも近所の魚河岸のシェパードと秋田犬が添い走った。田舎町故、辺りには犬が追いかける様な高速移動するものがそれ程無かったろう。私達にはいつも木屑や埃っぽい犬の臭い、クラッカー火薬の臭い、紙芝居屋が売るソース煎餅の臭いだのがしていたと思う。
ボイラー釜は銭湯の裏に有る。左の男湯、右の女湯の暖簾口を分ける番台の正面、双方の湯船の背景画はお約束、駿河湾越しの箱根富士、三保の松原。絵は半年毎に描き変わる。その背景画の裏側にボイラー釜は有る。
釜の焚付口がある土間は昼も薄暗らい。先に述べた大鋸屑は山となってその傍らに有った。釜の暖気で乾燥したそれは、その香りと弾力が潜ったり飛び跳ねたりに最高で、服からパンツの中まで大鋸屑だらけも御構い無しだ。
大きな釜の焚付口の重い鋳物の蓋を火掻き棒で開けると、土間の中は美しいオレンジ色の光に照らし出されそこら中の物から大きな影が生まれて動き出す。スコップでさらさらの大鋸屑を焼べる。それは一瞬ジワッと真黒になり、その中から無数の小さな赤い点が生まれ次いで全体が明るく輝き出す。その頃には自分の顔も目玉もバンバンに熱くなった。
土間から外に出て煙突を見る。薄暮にそびえ、高さ15m位はあったろう。
さっき焼べた木っ端や大鋸屑の煙が空に上って往った。あの時辺りが、私達に許されたエネルギー消費環境だった。

煙突の話
私の生家は昔銭湯をしていた。祖父の本業で無く、ただ風呂好きが高じたらしい。その為家に内風呂が無かったが、その事は何れ機会があれば書こう。
銭湯は私の生家から150m程離れていた。親戚の伯父が銭湯をまかされ、ボイラー釜の燃料の木廃材を伯父が原付リヤカーで運ぶ。木廃材は町の神社近くの製材所から出る木端や大鋸屑等。私や友達はそれに行き会うと、走ってるリヤカーに飛び付き、乗り上がり・・・挙句、伯父に叱られ、追い払われる。長閑かなものだった。
リヤカーにはいつも近所の魚河岸のシェパードと秋田犬が添い走った。田舎町故、辺りには犬が追いかける様な高速移動するものがそれ程無かったろう。私達にはいつも木屑や埃っぽい犬の臭い、クラッカー火薬の臭い、紙芝居屋が売るソース煎餅の臭いだのがしていたと思う。
ボイラー釜は銭湯の裏に有る。左の男湯、右の女湯の暖簾口を分ける番台の正面、双方の湯船の背景画はお約束、駿河湾越しの箱根富士、三保の松原。絵は半年毎に描き変わる。その背景画の裏側にボイラー釜は有る。
釜の焚付口がある土間は昼も薄暗らい。先に述べた大鋸屑は山となってその傍らに有った。釜の暖気で乾燥したそれは、その香りと弾力が潜ったり飛び跳ねたりに最高で、服からパンツの中まで大鋸屑だらけも御構い無しだ。
大きな釜の焚付口の重い鋳物の蓋を火掻き棒で開けると、土間の中は美しいオレンジ色の光に照らし出されそこら中の物から大きな影が生まれて動き出す。スコップでさらさらの大鋸屑を焼べる。それは一瞬ジワッと真黒になり、その中から無数の小さな赤い点が生まれ次いで全体が明るく輝き出す。その頃には自分の顔も目玉もバンバンに熱くなった。
土間から外に出て煙突を見る。薄暮にそびえ、高さ15m位はあったろう。
さっき焼べた木っ端や大鋸屑の煙が空に上って往った。あの時辺りが、私達に許されたエネルギー消費環境だった。



